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東京地方裁判所 平成11年(ワ)3604号 判決

原告 吉田正信

右訴訟代理人弁護士 鈴木喜三郎

同 和田冨太郎

同 木之瀬幹夫

被告 オリエントリース株式会社

右代表者代表取締役 頭山浩史

主文

一  被告は、原告に対し、金二五〇万円及びこれに対する平成一〇年六月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は、被告の負担とする。

三  この判決は、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

主文同旨

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は、原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、訴外株式会社ウィー・ドーナッツ・ジャパン(以下「訴外ウィー・ドーナッツ・ジャパン」という。)に対し別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)を賃貸してきたものであるが、平成七年、当庁に対し、同訴外会社が賃料の支払をしないため賃貸借契約を解除したとして、占有者である本訴被告代表者、訴外柳祐子(以下「訴外柳」という。)らを被告として、本件建物の明渡等を求める訴訟(当庁平成七年(ワ)第一八四一号)を提起するとともに、訴外柳を債務者として、本件建物の二階部分及び三階部分(以下「本件建物部分」という。)の占有移転禁止の仮処分の申立(当庁平成七年(ヨ)第四三八〇号)を行い、同年八月三一日、その旨の仮処分決定を得て、同年九月五日、右仮処分の執行を行った。

2  右1の当庁平成七年(ワ)第一八四一号事件において、原告と訴外柳との間で、平成八年三月二六日、左記内容の訴訟上の和解が成立し、その旨の和解調書(以下「本件和解調書」という。)が作成された。

(一) 訴外柳は、原告に対し、平成八年三月二八日までに本件建物部分を明け渡す。

(二) 訴外柳は、原告に対し、本件建物部分内の建具その他の造作の一切を譲渡する。

(三) 原告と訴外柳は、本和解条項に定める外に何らの債権債務のないことを確認する。

(四) 原告は、その余の請求を放棄する。

(五) 訴訟費用及び和解費用は、各自の負担とする。

3  原告は、本件和解調書について、原告を執行債権者とし、訴外柳に対する占有移転禁止仮処分の執行後の占有者として被告を執行債務者とする承継執行文の付与の申立を行い、平成九年二月二六日、これを付与された(以下、右付与された承継執行文を「本件承継執行文」という。)。

4  その後、原告は、当庁に対し、本件建物部分の明渡の強制執行の申立(当庁平成九年執ロ第一三一五号、第一三一六号。以下、右申立にかかる強制執行を「本件強制執行」という。)を行い、右申立に従い、当庁執行官は、同年六月一一日、本件強制執行に着手したが、これを続行することとし、被告に対し、本件建物部分を同月一六日までに任意に明け渡すよう催告するとともに、右続行期日を同月一七日と指定する旨告知した。

5  被告は、その後、当庁に対し、訴外農事組合法人海洋牧場(以下「訴外海洋牧場」という。)とともに本訴原告を被告として、本件承継執行文の付与に対する異議の訴え(当庁平成九年(ワ)第一二一〇五号、以下「本件異議訴訟」という。)を提起するとともに、それに併せて、強制執行停止の申立(当庁平成九年(モ)第七六七六三号、以下「本件強制執行停止の申立」という。)を行い、同月一七日、強制執行停止の決定(以下「本件強制執行停止決定」という。)を得た。

6  当庁執行官は、右同日、本件強制執行の実行のため本件建物に赴いたが、被告が本件強制執行停止決定を得た旨述べたため、これを中止した。

7  そのため、原告は、本件異議訴訟に勝訴して本件強制執行停止決定の取消を得るために、本件異議訴訟に応訴することを余儀なくされた。

8  本件異議訴訟は、平成九年一〇月一三日、当庁において原告勝訴の判決がなされ、その後被告及び訴外海洋牧場が控訴したが、平成一〇年四月一五日、東京高等裁判所において原告勝訴の判決がなされ、右判決は、同年六月二日の経過をもって確定した。

9  ところで、被告は、本件建物部分について訴外柳に対する占有移転禁止の仮処分の執行がなされた後に、原告の本件建物部分の明渡の強制執行を妨害するために占有をするに至ったものであり、本件承継執行文の付与に対する異議事由がないことを知っていながら本件異議訴訟を提起し、併せて本件強制執行停止の申立を行ったものであるから、被告の右行為は違法であり、しかも、被告には右違法行為をなすことについて故意があった。

10  原告は、被告の本件異議訴訟の提起及び本件強制執行停止の申立によって、次のとおり損害を被った。

(一) 賃料相当損害金

原告は、被告が本件強制執行停止の申立を行ったために本件強制執行が中止となり、本件強制執行停止決定の日の翌日である平成九年六月一八日から本件異議訴訟の第一審判決の言渡日である同年一〇月一三日まで本件建物部分の引渡を受けることができず、その間、賃料相当額の損害を被った。

本件建物部分の相当賃料額は一か月四五万円であるから、原告は、右期間に合計一六五万円の損害を被った。

(二) 強制執行準備費用

原告は、平成九年六月一七日に本件強制執行を実行すべく準備していたが、被告の本件強制執行停止の申立により強制執行が中止となり、次のとおり支出した強制執行準備費用が無駄となって、右費用相当額の損害を被った。

(1)  原告は、当庁に対し、本件強制執行の申立をし、執行官予納金として一一万五〇〇〇円を納付した。

(2)  原告は、平成九年六月一一日の強制執行のために、執行立会人の費用として三万四八〇〇円(他に右予納金から五二〇〇円の支払があって計四万円)及び建物内に入るために施錠を解錠する解錠技術者の費用として三万円の計六万四八〇〇円を支出した。

(3)  原告は、同月一七日の強制執行のために、立会人費用二万四八〇〇円(他に右予納金から五二〇〇円の支払があって計三万円)、執行補助者二〇名の費用六〇万円、運搬車輌三台の費用一一万四〇〇〇円、解錠技術者費用三万円の合計七六万八八〇〇円を支出した。

(三) 本件強制執行及び本件異議訴訟の訴訟遂行のために要した弁護士費用

(1)  原告は、本件強制執行及び本件異議訴訟の訴訟遂行を本訴原告訴訟代理人に委任し、同代理人に対し、弁護士費用として合計四〇〇万円を支払うことを約した。

(2)  ところで、本訴原告訴訟代理人の所属する第二東京弁護士会の報酬会規においては、弁護士報酬について次のとおり定められている。

ア 弁護士報酬は、一件ごとに定めるものとし、裁判上の事件は審級ごとに一件とする。

イ 民事事件の着手金及び報酬金については、着手金は事件等の対象の経済的利益の額を、報酬金は委任事務処理により確保した経済的利益の額をそれぞれ基準として算定する。

ウ 建物についての占有権、賃借権及び使用借権に関する事件の経済的利益の額は、建物の時価の二分の一の額にその敷地の時価の三分の一の額を加算した額とする。

エ 経済的利益の額が三〇〇万円を超え三〇〇〇万円以下の部分の着手金は経済的利益の額の五パーセントとし、報酬金は経済的利益の額の一〇パーセントとする。

オ 民事執行事件の着手金及び報酬金は、それぞれ、右エにより算定された額の二分の一、四分の一とする。

ただし、本案事件に引き続き民事執行事件を受任した場合の着手金は、右エにより算定された額の三分の一とする。

(3)  本件建物部分の建物価格の二分の一の額は二二三万六九二三円、その敷地の価格の三分の一の額は七六一万三三三三円であり、その合計は九八五万円(一〇〇〇円以下切捨て)である。

したがって、本件強制執行の着手金は一六万四一六六円であり、報酬金は二四万六二五〇円である。

また、本件異議訴訟の着手金は、第一審も第二審も四九万二五〇〇円であり、全部勝訴による報酬金は、第一審も第二審も九八万五〇〇〇円である。

(4)  したがって、原告が支払を約した四〇〇万円のうち右(2) 及び(3) により算定される弁護士費用合計三三六万五四一六円は、被告に負担させるのが相当である。

(四) 損害額合計

よって、被告が原告に対し賠償すべき損害は、合計で五九六万四〇一六円である。

11  よって、原告は、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償として、損害額の内金二五〇万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成一〇年六月一七日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否及び被告の主張

1  請求原因1ないし3、5及び6の各事実は認める。

2  同9の事実は否認し、主張は争う。

本件建物部分は、訴外ウィー・ドーナッツ・ジャパンが原告から転貸の承諾を得て賃借したのを、訴外海洋牧場が転借し、さらにこれを被告に再転貸したものである。

訴外柳は、原告との前記和解の成立当時、本件建物部分につき占有しておらず、被告が占有していた。そして、被告は、右に述べたとおり、占有権原を有する訴外海洋牧場から本件建物部分を転借していたものであって、訴外柳の承継人ではない。

したがって、被告を執行債務者とする本件承継執行文の付与は違法であり、本件異議訴訟の提起及び本件強制執行停止の申立は、いずれも正当な権利の行使であって、適法である。

また、被告には故意及び過失がない。

3  同10の事実のうち、原告の主張する費用の支出の点は不知。

「原告主張の本案判決」は東京高等裁判所に係属中であり、確定していないから、原告主張の弁護士費用は、委任契約上確定している債権ではない。

また、仮に、原告がその主張する強制執行準備費用を支出した事実があったとしても、本件強制執行停止決定及び本件強制執行の中止は、いずれも、裁判所あるいは執行官の判断で行われたものであるから、被告の行為と原告の支出とは因果関係がない。

第三証拠

本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。

理由

一  請求原因1ないし3、5及び6の各事実は、当事者間に争いがない。

また、請求原因4の事実は甲第一八号証により、同7の事実は弁論の全趣旨により、同8の事実は甲第一〇号証ないし第一二号証によりそれぞれ認められる。

二  そこで、被告の本件異議訴訟の提起及び本件強制執行停止の申立が違法であるか否か、また、被告に故意又は過失があったか否か(請求原因9)について検討する。

1  法的紛争の当事者が紛争の解決を求めて訴えを提起することは、原則として正当な行為であるが、当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときは、訴えの提起が相手方に対する違法行為となるものと解するのが相当である。

そこで、本件について検討する。

被告は、本件建物部分は、訴外ウィー・ドーナッツ・ジャパンが原告から転貸の承諾を得て賃借したのを、訴外海洋牧場が転借し、さらにこれを被告に再転貸したものであって、被告は訴外柳の承継人ではないから、被告を執行債務者とする本件承継執行文の付与は違法であり、本件異議訴訟の提起及び本件強制執行停止の申立は、いずれも正当な権利の行使であって、適法である旨主張する。

しかしながら、甲第一〇号証及び第一一号証によれば、被告は、本件異議訴訟において、右主張内容と全く同様の事実関係を述べ、本件承継執行文の付与は違法である旨主張したが、その主張事実について何ら立証活動をしなかったことが認められるところ、被告は、本訴においても、右主張事実を立証するための証拠を提出しておらず(なお、乙第四号証以下は、訴訟の途中から被告代表者が口頭弁論期日に出頭しなくなったため、未だ証拠調べを経ておらず、しかも、その内容も、被告が本件建物部分を訴外海洋牧場から転借した事実を示すものではない。)、むしろ、右各事実に甲第一三号証、乙第三号証及び弁論の全趣旨を総合すれば、本件建物部分は、訴外ウィー・ドーナッツ・ジャパン、訴外海洋牧場、訴外有限会社ジョイデル(以下「訴外ジョイデル」という。)、訴外柳と順次転貸されたものであって、被告が訴外海洋牧場から本件建物部分を転借した事実がないことが認められる。そして、甲第一号証、第二号証、乙第三号証及び弁論の全趣旨によれば、被告代表者は、被告及び訴外ウィー・ドーナッツ・ジャパンの代表取締役、訴外海洋牧場の理事を兼ねており、訴外ウィー・ドーナッツ・ジャパンと訴外海洋牧場との契約及び訴外海洋牧場と訴外ジョイデルとの契約に直接携わっていたことが認められるのであるから、被告が原告に対抗できる占有権原がないことを知っていたことは明らかである。

また、原告が本件建物部分について訴外柳に対し占有移転禁止の仮処分を申し立て、平成七年八月三一日にその旨の仮処分決定を得て、同年九月五日に右仮処分の執行が行われたことは当事者間に争いがなく、甲第七号証の二、第二〇号証及び弁論の全趣旨によれば、右執行の際、本件建物部分の占有者が訴外柳であると認められたこと、その執行において、執行官は、訴外柳の占有を解いて執行官の保管とし、訴外柳に使用を許したこと、訴外柳がその占有の移転又は占有名義の変更を禁止されていること及び執行官が本件建物部分を保管していることを記録した公示書を本件建物部分の二階の東壁及び三階の中央壁面にそれぞれ貼付したこと、平成九年二月四日、本件建物部分の占有移転禁止の仮処分の点検執行がなされたところ、右の公示書がそれぞれ存在するにもかかわらず、被告が本件建物部分を占有していたことがそれぞれ認められ、右各事実と、被告が訴外海洋牧場から本件建物部分を転借した事実がないこと(前記のとおり)、それにもかかわらず、被告が本件建物部分を占有する合理的な理由を何ら主張、立証していないことを総合すれば、被告は、右仮処分の執行後に本件建物部分を右仮処分につき悪意で占有した者であると推認することができ、右推認を覆すに足りる証拠はない。

したがって、被告は、本件承継執行文の付与に対する異議事由がなく、かつ、そのことを知っていたにもかかわらず、あえて本件異議訴訟を提起し、併せて本件強制執行停止の申立をしたものというべきであるから、被告の右行為は、裁判制度の趣旨目的に照らし著しく相当性を欠くものであり、違法である。

2  また、右1から、被告に故意があったこともまた明らかである。

三  原告の受けた損害(請求原因10)について

1  賃料相当損害金について

甲第一三号証によれば、訴外柳が本件建物部分を平成五年六月二二日以降賃料一か月四五万円で訴外ジョイデルから転借していたことが認められる。

したがって、本件建物部分の相当賃料額は一か月四五万円であると認めるのが相当であるところ、原告は、本件強制執行停止の申立により平成九年六月一八日から同年一〇月一三日までの間、本件建物部分の引渡を受けることができなかったものである(弁論の全趣旨により認められる。)から、原告は、その間、一六五万円の賃料相当額の損害を被ったことが認められる。

2  強制執行準備費用について

甲第一四号証ないし第一七号証、第二一号証、第二九号証及び証人小川新一の証言によれば、原告が本件強制執行のためにその主張する合計九四万八六〇〇円の強制執行準備費用を支出したことが認められる。

しかしながら、右金員のうち、執行官予納金一一万五〇〇〇円については、立会人費用として合計一万〇四〇〇円が支出されたことが認められる(甲第一五号証、第一六号証、弁論の全趣旨)ものの、残金の使途については何ら主張、立証がない。後述のとおり、本件強制執行は後に完了したものと推認されるところ、原告が納付した執行官予納金のうち右一万〇四〇〇円を除いた残金は、その後の手続費用として使用され、あるいは、残余があれば原告に還付されたものと推認されるから、右残金部分は、被告の本件異議訴訟の提起あるいは本件強制執行停止の申立による損害ということはできない。

したがって、原告の支出した右強制執行準備費用のうち、被告の右行為による損害といえるのは、八四万四〇〇〇円である。

3  弁護士費用について

甲第一〇号証、第一一号証、第一四号証ないし第一九号証、第二一号証、第二三号証及び第二九号証によれば、原告が本件強制執行及び本件異議訴訟の遂行を本訴原告訴訟代理人に委任し、同代理人に対し、弁護士費用として合計四〇〇万円を支払うことを約したことが認められる。

そして、甲第二二号証の一、二、第二四号証及び弁論の全趣旨によれば、本訴原告訴訟代理人の所属する第二東京弁護士会の報酬会規(以下「本件報酬会規」という。)には、弁護士報酬について、原告の主張する内容の規定が定められており、右規定に従って、本件異議訴訟の第一審及び第二審の着手金及び報酬金の金額を算定すると、原告主張の金額であり、その合計額は二九五万五〇〇〇円であることが認められる。

そして、事案の内容に照らすと、原告が支払を約した四〇〇万円のうち右二九五万五〇〇〇円の範囲で被告に負担させるのが相当である。

なお、原告は、本件強制執行の着手金及び報酬金相当額も損害である旨主張するが、本件異議訴訟において原告が勝訴したことにより、本件強制執行の続行が可能となったこと、実際、原告は、仮執行宣言付きで本件強制執行停止決定を取り消した本件異議訴訟の第一審判決の言渡日までの賃料相当損害金だけを請求していること、原告は本件強制執行の報酬金部分についても損害である旨主張するが、甲第二四号証によれば、本件報酬会規においては、報酬金は委任事務処理により確保した経済的利益の額を基準として算定する旨規定されていることが認められるところ、原告の右主張は、本件強制執行が完了したことを当然の前提とした主張になっていることからすると、本件異議訴訟の第一審判決後に本件強制執行は完了したものと推認される。したがって、結局、原告は、被告が本件異議訴訟の提起あるいは本件強制執行停止の申立をしなかったとしても、本訴原告訴訟代理人に対し、右強制執行の着手金及び報酬金を支払わなければならなかったのであるから、原告は、被告の右行為により、本件強制執行の着手金及び報酬金相当額の損害を被ったということはできない。よって、この点に関する原告の主張は失当である。

4  したがって、被告が原告に対し賠償すべき損害の額は、合計で五四四万九〇〇〇円である。

5  被告の主張について

(一)  ところで、被告は、「原告主張の本案判決」は東京高等裁判所に係属中であり、確定していないから、原告主張の弁護士費用は委任契約上確定している債権ではない旨主張する。

しかしながら、原告が弁護士費用を要したと主張する訴訟は、本件異議訴訟であり、右事件が既に終了していることは、甲第一〇号証ないし第一二号証から明らかである。

被告の主張する「原告主張の本案判決」とは、本訴原告が本訴被告代表者らを被告として提起した請求原因1記載の当庁平成七年(ワ)第一八四一号事件のことであると思われるが、原告は右事件の訴訟遂行に要した弁護士費用相当額の損害賠償請求しているわけではないから、被告の右主張は失当である。

(二)  また、被告は、仮に原告がその主張する強制執行準備費用を支出した事実があったとしても、本件強制執行停止決定及び本件強制執行の中止は、いずれも、裁判所あるいは執行官の判断で行われたものであるから、被告の行為と原告の支出とは因果関係がない旨主張する。

しかしながら、執行文付与に対する異議の訴えの提起があった場合の執行停止決定は、当該訴えを提起した者の申立により、かつ、当該訴えの異議事由が事実上の点につき疎明があったときに発せられるものであり(民事執行法三六条一項)、本件強制執行停止決定も、被告の申立及び疎明によって発せられたものである。また、本件において執行官が本件強制執行を中止したのは、被告の申立に基づく本件強制執行停止決定があったからである。したがって、被告の本件強制執行停止の申立と原告が被った強制執行準備費用相当額の損害との間に因果関係があることは明らかである。

四  以上によれば、原告は、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、損害額五四四万九〇〇〇円及びこれに対する不法行為後の遅延損害金の支払請求権を有していることが認められるところ、原告の本訴請求は、右損害額の内金二五〇万円及びこれに対する不法行為の後である平成一〇年六月一七日から支払済みまでの遅延損害金の支払を求めるものであるから、その範囲内の請求である。

よって、原告の本訴請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六一条を、仮執行宣言につき同法二五九条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 伊藤繁)

物件目録

所在 東京都豊島区高田三丁目一〇番地三七

家屋番号 一〇番三七の一

種類 店舗・居宅

構造 鉄筋コンクリート造陸屋根地下一階付四階建

床面積 一階 四三・一五平方メートル

二階 四三・四二平方メートル

三階 四三・四二平方メートル

四階 二二・八六平方メートル

地下一階 四三・四二平方メートル

(現況の床面積)

一階 四九・四八平方メートル

二階 五〇・六四平方メートル

三階 五〇・六四平方メートル

四階 二七・九二平方メートル

五階 二五・一二平方メートル

地下一階 四九・四八平方メートル

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